ブンドドに向くオモチャの選び方
ぼくは「オリジナルキャラクター派」である
一口にブンドドといっても、それが指す言葉は人によって千差万別です。
ぼくは原則としてハンドリング・ブンドドを「ブンドド」と呼ぶことが多いですが、もちろん、1シーンを感じさせるような写真を撮ることを「ブンドド」と呼ぶ人もいれば、オモチャにさまざまなポーズを取らせて楽しむことを「ブンドド」と呼ぶ人もいます。
多様性が尊重されるべき現代ですから、これこそがブンドドなのだという原理主義者的物言いは避けたいものです。
しかし、ブンドドのあり方によって、いくつかのグループに分けることはできるかと思います。
オモチャ同士の戦いから連続もののストーリーを描き出すという、ぼくと似たような遊び方をしている人でも、オモチャの設定をどのように参照していくかという部分については、さまざまな意見が出てきます。
- 完全オリジナルキャラクター化する
- オリジナルキャラクター化するが名前は参照する
- オリジナルキャラクター化するが能力や戦い方・性格は参照する
- 原作キャラクターとして用いるが人間関係は参照しない
- 原作キャラクターとして用いる
オリジナルキャラクターにするか、原作キャラクターとして用いるかという大きな軸の中に、上記の1~5の濃淡があるようなイメージですね。それも、一人のブンドド民が一つの考え方を貫いているとも限らず、オモチャによって「これは原作を参照する」「これは原作を参照しない」という風に使い分けていることがままあります。
この中でいうと、ぼくはおおむね1~3の間でオモチャを取り扱うことが多いですね。どの選択肢にしろ共通しているのは、基本的にオモチャを「オリジナルキャラクターとして取り扱う」という点です。
小さいころ、ブンドドに目覚めたころから、ぼくはオリジナルキャラクター派でした。
当時はお金もありませんでしたから、遊ぶオモチャの主力はガン消しやキーホルダーフィギュアのように、3~4センチていどの小さな非可動フィギュアが中心です。100円で手に入れた彼らのことを、ぼくは完全なオリジナルキャラクターとして扱いました。
中にはガンダムもいましたし、ファイナルファンタジーのキャラもいれば、ロックマンのキャラもいる。おおよそ同じサイズであったとしても、厳密に原作のスケール感を適用すれば、同じ世界観で遊ぶことは困難でした。
そこでぼくは、ガンダムは人工生命体のサイボーグ、ファイナルファンタジーのキャラは人間などと、種族が異なる連中として脳内変換し、遠未来を舞台としてSF戦記のような設定で遊んでおりました。
(ちなみにこの遊びは中学生ごろまでやっていました。だいぶ無邪気な中学生です)
この頃から、ぼくのなかには「ブンドドは、オモチャをオリジナルキャラクター化して遊ぶもの」という大前提が刻まれていったのだと思われます。
時が流れて、大人になりました。
卒業しかけていた玩具趣味に回帰してからも、ぼくにとってオモチャはコレクションアイテムではなく、遊ぶものでありつづけました。4歳のころと、なんら変わりはありません。ただ、経済力だけが異なります。
当時は思い出したように買い与えられるガチャポンや食玩がせいぜいでしたが、今度はみずから主体的にオモチャを選ぶことができます。またネット通販の普及によって、購入できるオモチャの幅は爆発的に増加しました。オモチャは与えられるモノから、みずから選び取っていくモノへと変わっていったのです。
こうなると、じぶんの好みはより明確化・先鋭化を遂げます。
さいしょは「欲しい!欲しい!」という飢餓感を本能の赴くままに満たしていたオモチャ収集ですが、だんだんと方針・制限が固まってきました。こういうオモチャは遊びにくい、こういうオモチャが遊びに組み込みやすい……という個々の感想が蓄積し、取捨選択の基準ができあがってきたのです。
というわけで、今回はぼくのブンドドにおけるオモチャ選びの基準を、ご紹介していきたいと思います。あくまで、原作再現ではなく、オリジナルキャラクター化してのオリジナルストーリーを遊ぶという前提のもとの基準ですので、この条件に当てはまらない方はご容赦ください。
原作を知らないオモチャを選ぶ
のっけから、多くの玩具マニアが目を丸くするような基準だと思います。
世界中にあまた存在するオモチャシリーズのすべてを抑えることなど、一介のコレクターにはとうていできない。そこで、原則として「原作を知らないオモチャは買わない・集めない」という制限を設け、経済事情が破綻しないようコレクションを築いていく。これが、コレクターとしての発想でしょう。
じっさい、名の知れたコレクターは、きわめて狭い範囲にのみコレクションの焦点を当てている人が多いのです。例えば、バットマンマニアのなかでも、バットマンだけに焦点を当ててコレクションを築いていくほうが、深さを追及しやすい。ロビンやジョーカーやベインやDr.フリーズなどはバッサリと切り捨てて、とにかくひたすらバットマンだけを収集していく。こうすれば、すべてとはいかなくても、かなり多くのバットマングッズにアクセスすることができますからね。
そこまでいかなくても、例えばマーベルレジェンドでは「MCUに登場する実写キャラクターだけを買う」「スパイダーマン関連は原作コミックデザインのキャラだけを集める」という風にルールを決めている方は多いのではないでしょうか。
しかし、ぼくのようなオリジナルブンドド民にとっては、真逆なのです。
「なるべく原作を知らないオモチャを買う」。これが、ぼくのとっている原則です。
原作というのは、想像力の起点にもなりえますが、足枷ともなります。ぼくにとって、スパイダーマンのフィギュアはもはやスパイダーマン以外にはなりえません。スパイダーマンを知ってしまっているからです。スパイダーマンのフィギュアを眺めた途端、クモに噛まれて超能力を身につけたピーター・パーカーとか、おじさんが犯罪者に殺されているとか、糸を使ってスイングしながらニューヨークの高層ビル間を跳び回っているとか、親愛なる隣人とか、そういったキーワードが自然と頭の中に甦ってくるのです。そこから離れるのは、もはや難しい。そうなると、さまざまな設定を付け加えようとしても、難しくなります。
もちろん、スパイダーマンならスパイダーマンで、ブンドドに組み込むことはできます。先述の5択でいうなら、「4.原作キャラクターとして用いるが人間関係は参照しない」や、「5.原作キャラクターとして用いる」あたりのルールを適用すればいいのですね。
つまり、スパイダーマンはスパイダーマンとして扱う。しかし、たとえば「今回のヒーローはピーター・パーカーの亡くなった両親の同僚である」などと関係性を捏造するか、「Dr.オクトパスが開いた異空間転送ゲートによりこの世界に送られてきた」などと展開を捏造することで、スパイダーマンがじぶんのブンドド世界に馴染むよう、設定を整えてやるのですね。こうすれば、スパイダーマンを自然とブンドドに合流させる道筋をつけてやれます。
しかし、正直いうと、これはあまり好みの遊び方ではないのですよね。
ぼくにとって、ブンドドでいちばん楽しいのは、「キャラクター設定を0から考えているとき」です。デザインが気に入って買ってきたオモチャを開封して、しげしげと眺める。そこでいろいろと想像を巡らせます。
「狼モチーフだな。かなり上半身肥大の体型をしている。パワータイプなのだろう」
「着ている鎧を見る限り、あまり文明レベルは高くなさそう」
「しかし衣服や装備をまとうぐらいだから、人語を解するていどの知能はあるはず」
「目が赤い。どちらかというと悪役っぽいな」
「そうだ。いっしょに買ってきたトカゲのフィギュアと悪役コンビにしよう」
「イメージはホーム・アローンの泥棒コンビ。じゃあこっちは知性派で、トカゲを間抜けにするか」
「前回、金色のゴリラを悪役として登場させたっけ。この二人組をこいつの子分にするか。なんとなく体型も近いから、しっくりきそうだ」
……というような具合で、キャラクター設定を詰めていくのです。
おおよそこれぐらいの設定が決まると、だいたいぼくは遊びに合流させてしまいます。名前も決めていないことが多いです。戦いの中で「あ、名前つけてなかったわ」と気がついて、ここではじめて原作の設定を見直して名前だけを借用したり、見た目から適当に付けたりします。
ちなみにこの狼は「ファング」と名付けました。まさに適当ですね。
こういった遊び方を主としているため、なるべく原作知識は持たないほうがいい。というわけで、ぼくは北米アマゾン(Amazon.com)などを覗いて、なるべく知らないキャラを日夜漁っているのですね。
もちろん、これは原則であって、絶対的ルールではありません。好きなキャラがいて、どうしてもじぶんのブンドド世界で活躍させてみたいと思うのであれば、無理矢理にでも登場させてやりましょう。
設定のつじつまは、じぶんが納得さえしていれば必ずしも合っている必要はありませんしね。ブンドドは自由なのです。
情報量の多いオモチャを選ぶ
第二の原則は、「なるべく情報量の多いオモチャを選ぶ」ということです。
オモチャに盛り込まれた情報は、想像のきっかけとなります。ただ、デザインがゴチャゴチャしていればいいというものではありません。どちらかというと、「じぶんが好きな設定に誘導できそうなフックが多いか否か」を見極めるというほうが適切でしょう。
ためしに、以下の2つのオモチャを見比べてみましょう。
どちらが「情報量が多い」でしょうか?
一見、左の兵士のほうが情報量は豊富です。手榴弾や防弾チョッキ、背嚢やゴーグル、通信機らしいものまで身につけています。しかし、このオモチャを見たときに引き出される情報はどれぐらいあるでしょう。
「重装備の兵士」
このような一言に、まとめられてしまうのではないでしょうか。想像力も、その枠を超えることはなかなか難しい。決して遊びに組み込めないわけではありませんが、重要な役を担わせるにはちょっと役者が足りない印象です。
いっぽう、右側のオモチャを見てみましょう。
「4本腕のクリーチャーだ! 体表の質感や顔立ちでいうと爬虫類系かな」
「汚い服から中年太りの腹が突き出てる。やけに生活感があるな」
「染みだらけのエプロンだ。場末の料理店経営かな。となるとナイフは包丁を兼ねてるのかな。怒るとこのナイフを振りかざしてきそうだ」
「でも悪人ではないはず。悪人はきれいな服を着て人をこき使ってるもんだろう。この人は汚れた服から見て自ら働く人だし、店をやっているのだから人ともうまくやるだろう」
「地元に愛される名物店主ってとこかな。粗暴な態度とは裏腹に面倒がいい。主人公たちの行きつけの店ってことにしようかな。いろんな種族が混在する村の、ダイナーみたいな店だ」
……などと、次々と設定が引き出されてきます。外見から、生活スタイルから性格、ふだんの行動や口調までもが見えてくる。こういう特徴を指して「情報量が多い」とぼくは言います。上記のようなところまで設定が決まっていると、ブンドドにおいて活躍させるのも難しくありません。出てきたとたんに、このキャラクターは自分自身の声でしゃべりはじめてくれることでしょう。
「おいてめえらまた来たのか! ツケを払いにきたんだろうな?」
「兄さんがた、悪りいが出てってくんな。……ここは汚ねえ店だが、メシを食うための場所だ。トラブルを持ち込む場所じゃねえんだよ」
「俺の店で暴れようたあ、いい度胸だぜ。この俺が相手になってやる」
こういうオモチャを、ぼくは選んで買うようにしています。
ただし、どういうフックから想像力が引き出しやすいかは、ひとによって千差万別です。ぼくにとって想像力が刺激される「いいオモチャ」が、あなたにとって必ずしもそうとは限りません。
じぶんの目で、見極めるべきでしょう。
「自分が想像力を広げやすいか?」「自分のブンドド世界に馴染むか?」という視点で、購入を検討しているオモチャを見つめ直してみましょう。苦労なく想像力が動き始めるならば、買うべきでしょう。
ちなみに
原作を知らないオモチャを買う、というのはなかなか難しいものです。
オリジナル玩具シリーズが人気を集めにくい時代となりました。メディアによって色つけがされていないオモチャを探すのは、もはや不可能と言っていい。ですが、単純に「自分が知らなければそれでいい」と考えれば、さほど難しくはありません。
Amazonの検索ボックスに「アクションフィギュア」とだけ打ち込んでみましょう。世のなかには、意外とあなたの知らないコンテンツが溢れています。見たこともないオモチャを見つけたら、チャンスです。
あなたの想像力で、塗り替えてしまいましょう。