ブンドドにオススメの世界観設定5選
ブンドドにおける世界観は重要
オリジナルストーリー派のブンドド民において、どんな世界設定で遊ぶかというのはかなり重要な問題です。
ブンドドも始めたての頃は短篇ストーリーで満足しているものですが、我々は常に壮大なストーリーを描こうと試みてしまいます。まとめることなどとうてい不可能なレベルまで風呂敷を広げ、幾度もの世界の危機を繰り返し、人類存亡を賭けて戦う羽目に陥ります。
それもとうぜんです――なにせ、まとめる必要はないのですから! じぶんで物語を完結させる責務のある創作とは異なり、ブンドドは自由です。どこから始めてもいいし、どこで終わってもいい。途中がどれだけ抜けていたって構わない。極端なことを言えば、仲間たちの出会いの場面を描いた後に、すぐ最終決戦を遊んだっていいのです。これが、じぶんしか受け手がいない物語のすばらしいところですね。
加えて、オモチャ趣味というのは留まるところを知りません。フィギュアはフィギュアを呼ぶという名言がありますが、そのとおり。オモチャは延々と増えつづけてゆきます。この無数のオモチャたちそれぞれに、ブンドドの中で役割を与えてやりたい、と思うのが人情というもの。こうして登場人物の増加にともない、物語は肥大化をしてゆくのです。
さあて、思案のしどころです。
このオモチャたちを活かすには、いったいどんな世界設定を与えてやればいいか? どういう世界なら、彼らの多様性を受け止め、かつ活躍の場を与えてやれるのか?
もちろん、いまブンドドストーリーが膨らんでいる最中であれば、改めて世界観などを考え直す必要はないでしょう。しかし、どうにも妄想が行き詰まってしまうという場合もありますし、いまいち盛り上がりに欠けるなあとマンネリに苦しむこともあるはず。
世界観を一新してみたいという欲望が湧いたなら、ぜひ下記の設定を参考にしてみてください。いずれもぼく自身がよく遊び、よく楽しんだ設定です。現代日本でエンターテインメント系のコンテンツによく触れている人であれば、どの設定でも妄想の翼は広がることでしょう。
コツとしては、なるべく「勝手にストーリーが動く」設定を選ぶこと。妄想はひねり出そうとしても出るものではありません。これまでに触れてきたコンテンツたちが、オモチャという触媒に反応して妄想というかたちで吹き上がってゆく。こういう体験こそが、ブンドドの醍醐味です。
ただ、世界観だけではうまくストーリーが回りにくそうだという方のために、ストーリー展開に迷ったらどんなイベントを起こすか、というヒントも書いておきます。また、ぼくのイメージソースとなった作品も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
では、始めましょう。
設定1:正義と悪の組織が対立
およそブンドドと呼ばれる遊びの中で、もっともオーソドックスと思われる設定が、これです。ブンドドを始めたころに遊んでいたのも、こうした設定ではなかったでしょうか。
基本的には正義と悪が衝突する、というだけのストーリーラインとなります。極めてシンプルです。シンプルゆえに、強力な設定と言えるでしょう。
ヴィランがなにか悪行を成します。その陰謀を打ち砕くためヒーローが出てくる。あとは両者が衝突する。基本的な戦いの流れはこういった形です。
勧善懲悪の意味を哲学的に思い悩むのは、やめましょう。とにかく正義は正義、悪は悪。特撮ヒーローもの、特にスーパー戦隊的なものを思い浮かべつつ、思い切り童心に返って遊ぶのです。
ただし、特撮作品と異なる点がひとつあります。
それは、ヒーロー過多になりがちであるということ。創作の中では、ストーリーを盛り上げる必要もありますから、正義側は少数精鋭、悪の側は人海戦術と相場が決まっています。この人数バランスは、ブンドドでは保ちにくい。どうしても、ヒーロー系のオモチャのほうが手に入りやすいからです。
そこで、思い切ってヒーローの側も組織にしてやるのがコツです。さまざまなヒーローたちが所属するチームや組織などを構想し、それと敵対させるように悪の組織を配置する。
なるべく人数比率が「1:1」に近づくように心がけましょう。
また、ヒーローとヴィランに明確な実力差を設けないようにすることです。強く設定するならば、ヴィランの方の戦闘能力を高くしてやる。こうすることで、ヒーローの側が頭を使って各個撃破するなどの対応を求められ、ドラマが盛り上がります。
また、打ち倒した敵を基本的に死なせない、というのも重要なコツです。死亡させてしまえば、同じオモチャを再登場させるのが難しくなってしまうからです。ここはバットマンシステムを採用しましょう。倒されたヴィランは殺されるのではなく投獄される。しかし、そこから脱獄が起きてヴィランが再びヒーローの前にたちはたがる……とこうしてやればいいのです。
ストーリー展開に迷ったら?
総力戦に持ち込んでみましょう。
ふだんは各地に散らばって戦っていたヒーローとヴィラン。しかしヴィランが集結し、ヒーローたちの本拠地である基地への一斉攻撃が掛けられる――。多くのヒーローとヴィランが入り乱れる戦場で、数々のドラマが起こることでしょう。
またその大戦が起きたことによる余波などをその後のストーリーに組み込めば、より物語の立体感が増します。「アベンジャーズ」シリーズにおいて、「エイジ・オブ・ウルトロン」の際の戦いがどれほどの余波を生んだかを参考にしてみてはいかがでしょうか。
・オススメ作品:「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」
設定2:放浪もの
典型的なRPGのようなスタイルの物語です。
主人公たちは何人かで旅をしており、そのゆく先々でトラブルに遭遇し、これらを解決していきます。人びとの居住地に迫る敵を打ち倒したり、生贄の儀式に捧げられそうな少女を助けたり、隣村同士の紛争を解決したり、宝の眠るダンジョンを攻略したり……などなど、ミッションのネタは尽きません。
これらのミッションを見ても分かるように、ファンタジー的な設定と相性がいいですね。ただ、ファンタジーに限ったストーリーラインでもありません。
時代劇にすれば「座頭市」に、西部劇にすれば「荒野の用心棒」に、SFにすれば「マンダロリアン」にできるでしょう。
このようにベースとなる世界設定を組み替えることでも、妄想の幅は拡張できます。
この設定を使うのにオススメなのは、「主人公とそのチームが明確に決まっている」という場合です。ひとりのオモチャに自己投影するタイプのブンドド民には、うってつけでしょう。とにかく気に入ったオモチャが1つあって、これを中心に据えたブンドドをやりたいという方にも向くと思います。
旅をつづけているうちに、仲間が増えていくのも放浪ものの楽しい点です。
パーティメンバーはみんな仲良しこよしなのではなく、相性が合わなかったり互いにライバル視しているような関係のキャラクターを設定してみても、妄想は盛り上がります。
仲間の人数はいくら増やしてもいいですが、だいたい6人を超えた辺りから、全員を活躍させにくくなってくるようです。これ以上の人数になった場合には、パーティ離散イベントやサブパーティ立ち上げなどを検討してみましょう。「一方、その頃……」と、主人公と行動を別にするキャラクターの活躍に焦点を当てるのも、楽しいものです。
ストーリー展開に迷ったら?
魔王を出してみましょう。
魔王という名称である必要はありませんが、要するに、大筋のゴール地点を決めてやるのです。こうすると、やることがなくなりつつあったストーリーが、再び甦ります。強大な敵を打ち倒すためには、なにが必要でしょうか? ブンドドの場合は「伝説の武器を獲得する」という方向ではなく、「実力のあるキャラを仲間にする」といったステップで強化を図るのが鉄板です。ここぞとばかりに、強キャラ設定をしたオモチャを登場させまくりましょう。敵の幹部として出すのもいいですね。裏切り・改心はストーリーの華ですから。
・オススメ作品:「HUNTER×HUNTER」「マンダロリアン」
設定3:天下一武道会
これも、シンプルな設定ですね。
誰がいちばん強いかを決める。そのために戦う。言葉にすればこれだけの話ですが、これが盛り上がるのですよね。一時期少年マンガの定番展開として採用されただけのことはあります。とにかく、人は「誰がいちばん強いのか」というシンプルな問題設定が大好きなんですね。大人になってもブンドドを嗜むような童心を残した人なら、なおのこと。
まずは、16体か32体のオモチャを選出します。なるべく、戦闘スタイルがバラバラになるようなオモチャを選ぶのがコツです。
それからいよいよ、この設定における最大のお楽しみ、「トーナメント表づくり」が始まります。この部分の楽しみが8割を占めているといっても、決して過言ではない。
トーナメント表をつくるときには、わくわくする組み合わせをたくさん作りましょう。戦闘スタイルがまったく噛み合わない2人、あるいはまったく同じタイプの2人。どちらかが圧勝しそうな2人、体の大きさがまるで違う2人、まったく戦いの行方が想像できない2人……などなど。
ありとあらゆる、奇妙な組み合わせを楽しみましょう。
トーナメントは、大番狂わせが起こるほどに盛り上がります。およそ勝ちそうにないほうが、予想だにしなかった勝ち方で勝利を収める。まるで弱そうに見えていたキャラが、実はとんでもなく強かったことが明かされる。
こうした逆転劇を、次々に起こしましょう。
トーナメント表づくりの時点では見えていなかった設定が、意外な勝利のつじつまを合わせようと試行錯誤する中で、いくつも見えてきます。その驚きが、この遊び方の楽しみのひとつです。
ストーリー展開に迷ったら?
意外な因縁を明かしましょう。
因縁の対決こそが、最も感情が盛り上がるポイントです。俺が強いと証明する、というシンプルな動機設定だけで済むのがこの遊びの大きなメリットではあるものの、「それ以外のこと」を試合に持ち込んでくる人間がいたほうが、話は盛り上がります。
- かつての雪辱を晴らしにきた
- 親や兄弟の復讐をしにきた
- 長年のライバル関係だった
- 昔は師匠と弟子の関係だった
などなど、「因縁」の中身はいくらでも出てくるでしょう。こういった因縁の対決は、きっと他の試合よりも面白さを増します。
もし主人公的な立ち位置のオモチャを設定しているなら、因縁はそこに繋げると面白くなってゆきます。
・オススメ作品:「グラップラー刃牙」
設定4:群雄割拠の戦国時代
正義も悪もなく、ただ天下統一を目指して数多の勢力が入り乱れながら戦う。勢力単位での裏切りや協力や決戦が次々に巻き起こり、そのダイナミズムに巻き込まれた個人たちはただ振り回されてゆくばかり……。
こういった設定にロマンを見いだせるなら、あなたは群雄割拠ものに向いています。信長の野望や三国志のように、勢力とそこに所属する武将たちのドラマが焦点です。これらのゲームをプレイしたことがある人なら、おおよその進め方はお分かりでしょう。
まずぜひとも必要になるのは、白地図です。
ここに、勢力図を色分けして書き込んでゆく。
各勢力において設定すべきは、
- 君主
- 軍師
- 宰相
- 武将
- 内政官
といったところでしょうか。
色分けした勢力図に、これらひとまとめしたオモチャを配置してやったところで、遊びは始まります。
各勢力に火種を植え付けてから話を動かしてあげれば、ストーリーは自然と動きはじめます。誰かが誰かを裏切り、誰かの不在に誰かがつけこみ、誰かが誰かの勢力へと身を寄せ……こうした幾重にも重なってゆくドラマを、俯瞰の視点で眺めることに恍惚をいだけるならば、楽しめることでしょう。
この遊びのポイントは、「見えていない数多くの兵たちをいるものとして扱う」ということでしょう。こういったストーリーラインの元では、個別のキャラが衝突する戦闘ではなく、多くの人間が入り乱れる戦争シーンこそ華。となればたいてい雑魚兵士役が足りなくなりますので、そこは妄想力でぐぐっと乗り切りましょう。
下剋上は乱世の華、と申します。
一兵卒が戦場で功を立てて出世を遂げ、やがては将軍、果ては君主へと至る道を上り詰めていくというのも、なかなか心惹かれる展開です。だんだんと部下が増え、人間的に成長を遂げてゆき、戦場で重い役目を任されるようになってゆく……というキャラ設定のオモチャを、ひとつ用意してやりましょう。のちのちの展開で、あなたが予想だにしないほど大きな役割を果たしてくれるかもしれません。
勢力図が塗り替えられていく都度、さいしょに用意した白地図がすこしずつ変わっていくのも楽しいものです。カラーペンで塗りつぶした白地図をじっさいに塗り替えていくのは厳しいですから、あらかじめ用意した何枚もの白地図を、勢力比が変わるたびに交換していきましょう。こうすると、後で勢力図の変化を見ることもできて楽しみは数倍になります。
ストーリー展開に迷ったら?
連合軍を作らせましょう。
「三国志」における反董卓連合軍、あるいは「キングダム」における合従軍など、ひとつの突出した勢力に対して複数の勢力が同盟を組み、おなじ戦場にあらゆる武将が駆けつけるという展開は、気持ちが燃え立つものです。
連合軍側と単独国軍側、どちらに視点を据えるかはお好みで。どちらの戦力を強くしても、面白いですよ。あとは連合軍が一枚岩ではないという設定をしても、なかなか味わい深い展開が見られます。
・オススメ作品:「蒼天航路」「ゲーム・オブ・スローンズ」「キングダム」
設定5:ポストアポカリプスもの
文明崩壊後の世界を舞台としたストーリーは、なぜこれほどまでに心惹かれるものがあるのでしょう。思うに、その魅力には以下のような要素が含まれます。
- サバイバル生活と相性がいい
- 弱肉強食で人間性が浮き彫りになる
- 現代生活の名残りが面白い
- 初期の共同体の在り方が見られる
- 人がすぐ死ぬのでドラマが起きやすい
- 文明生活のありがたみを実感できる
ここに挙げたのはあくまで一例に過ぎませんが、ちょっと考えるだけでもこれぐらいの面白さを秘めているのですから、ポストアポカリプスものブームはまだまだ続きそうです。
さて、こうした文明崩壊後の世界という設定は、ブンドドとも異常に相性がいいのが特徴です。
まず、未来を舞台にしていますから、現代技術以上のロボット・パワードスーツといった兵器が登場させられます。でありながら、文明はすでに失われていますから、これらのロボット類が無尽蔵に登場することにも、制限が加えられます(ロボット兵士が1つしかなくても、世界観的に納得できるのですね)。
またこれらのロボットが野生化していたり、部品を失って仏像のように沈黙していたりしても面白い。マッドマックスの車をロボットに置き換えたような野蛮な連中を出してみるのもいいかと。
また、舞台設定として、土地が汚染されていてもおかしくないですから、食糧の確保という点には困窮しているはず。こうなると、キャラが動く動機が工面しやすい。
それに、文明崩壊後という設定上、人間社会の構造が後戻りしていてもおかしくない。となると、群雄割拠の乱世になっていても、封建主義の中世と化していても、筋が通るのですね。
そのため、設定2や設定4などと組み合わせるかたちでも、ストーリーを組み立てていけるんですよね。
個人的には群雄割拠ものとの組み合わせが好みでした。
イモータン・ジョーのような半ば神格化したリーダー率いるカルト教団vs人種至上主義を掲げたナチス的軍事グループvs主人公の元に集まった善人たちの寄せ集めグループ、という三つ巴戦が楽しかったですね。
なんてったって、ストーリー展開に自由が利くのです。
いまはネット小説などでも中世ファンタジーが中心ですが、数年後にはポストアポカリプスものが席巻していてもなんらおかしくないですね。それぐらい世界設定として強い。
ストーリー展開に迷ったら?
過去文明の遺産を出してみましょう。
核兵器のボタンでもいいですし、イデオンみたいな超強大ロボットでもいいですね。こういうマクガフィンを設定してやると、争奪戦という大筋が導けます。群雄割拠がはかどりますね。
・オススメ作品:「マッドマックス 怒りのデスロード」「Fallout」「ウォーキング・デッド」「スワン・ソング」「ザ・スタンド」
最後に
どの設定を選んでもいいですが、あまりオモチャから離れないようにだけ気をつけましょう。
設定を煮詰めることに集中するあまり、オモチャに触ってないなんてことになっては、本末転倒です。
凝った世界観を用意しなくても、ヒーローとヴィランのフィギュアをぶつけるだけで、立派なブンドドとなります。
ときどき、こういうかたちで原点回帰してみるのも、いいかもしれません。
では。